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給与支給日の決め方と締日の関係

社労士・岩壁

給与支給日は何日に設定しても構いませんが、決め方にはルールがあります。会社を経営していると、いつ現金が出るのかを把握することはとても大事ですから、現金がいつ会社の預金口座から出るのかもきちんと把握しなければなりません。資金繰りをするにあたって、何日支払いにしたらよいのか? 実務に影響する部分が大きいので何日ならバランス良く処理できるかを検討していきましょう

支給日の決め方

五十日(ごとおび)に多い支給日

給与支給日はいわゆる五十日(ごとおび)が多いと言われています。

五十日(ごとおび)とは、毎月5日・10日・15日・20日・25日と、30日または月末日のことである。

Wikipedia

実は支給日を指定する法律はなく、企業ごとに自由に決めることができます。

しかし多くの企業で五十日が給料支払い日になっているのはなぜでしょうか。

諸説あります。

  • 5の倍数で覚えやすい
  • 個人の決済は月末が多いので、少し早めの25日にしている
  • 末日にすると月により支給日が異なる

「これ」という決定的な理由というよりは歴史的な経緯から今も五十日に沿った支払い日が多くなっています。

締め日から何日空ければ良いか

給与計算は勤怠実績を基に計算されますから必然的に「勤怠締日=給与締日」となります。

勤怠を締めないと残業代などの計算に必要な情報が集まりませんから、計算処理をするための期間も必要です。

FBを利用する場合は手続き期限にも注意を要します。(FB=ファームバンキング:インターネット上で振込手続きをすること)

次のような要素を検討しましょう。

  • 給料計算は社内か、外注か
  • 社内の場合は給与に詳しい社員がいるか
  • 勤怠システムを使っているか
  • 勤怠の集計にかかる時間はどれくらいか
  • 振込手続きの期限はいつか

これらを勘案すると、締め日から支払い日までは最低2週間は空けた方が良いと言えます。

社内事情を検討の上、余裕がなければもっと期間を空けた方が良いでしょう。(末日締の翌20日払い・25日払いなど)

給与支給に関するルール

賃金支払い5原則

労働基準法では給料支払いの基本ルールとして、次の賃金支払い5原則を定めています。

  1. 通貨で支払う
  2. 直接労働者に支払う
  3. 全額支払う
  4. 毎月1回以上支払う
  5. 一定期日を定めて支払う

この中で締め日と支払い日に関係するのは「毎月1回以上支払う」と「一定期日を定めて支払う」です。

毎月1回以上支払う

まず最低でも月に1回は支払う必要があります。

時給や日給で給料計算されることが多いアルバイトの場合、月2回払いや週払いも見られます。

1回以上ですからもちろん問題はありませんし支払い日が多いことは労働者に有利な条件です。

しかし月給制の場合は月2回払いや週払いにすると計算が煩雑になりますから、特に理由がないのであれば原則通り月1回にしましょう。

一定期日を定めて支払う

支払日をきちんと定めなければなりません。

これはきちんと日付を指定する、ということです。

【OK例】
・毎月20日払い
・毎月末日払い

【NG例】
・毎月最終金曜日払い(月によって日付が変わるため)

なお末日締めについても月により日付が変わりますが、こちらは例外的に問題ありません。

MEMO
給与支給日が金融機関休業日にあたる場合は前倒し・後ろ倒しのどちらでも大丈夫です。ですが実務的には末日を支給日にしている場合、前倒しして金融機関休業日の前日に支払うようにしましょう。後ろ倒しにすると支払い日が翌月1日や2日になってしまい毎月1回以上のルールを守れないからです。

社労士・岩壁

もちろんただ法律を守っていれば良いという話ではありません。実務としては“労務”と“財務”の観点が必要です。

労務的な視点

従業員は給与をもらうために働いています。(給与だけが働く理由だと言いたいわけではありません)

どんなに好きな仕事でも、給与をもらえくなったら辞めますよね?

それに給与は労働の対償ですから、すでに働いた分の給料はできるだけ早めに支払うべきと言えます。

例えば末締め・翌月末日払いの場合、働いた分の給与が支払われるのは1ヵ月先になります。

法には反しませんが従業員側の気持ちでは「まだまだ先だなぁ」と気分は上がらないでしょう。

しかし一方で給料計算には事務処理時間が必要です。

「支払い日を早くしすぎて給料計算がミスだらけ」では意味がありませんから、締め日から支払い日まで確実に事務処理ができる日数を確保しましょう。

これは社内で給料計算をする場合でもアウトソーシングする場合でも同様です。

財務・経理的な視点

当月払いと翌月払い

月給制の場合には「当月払いか翌月払いか」をまず決める必要があります。

当月払いか翌月払いかによって財務・経理に出る影響が変わってきます。

  末日締め、当月20日支給の場合 末日締め、翌月20日支給の場合
4月分基本給 4月20日支払い 5月20日支払い
4月分残業代 5月20日支払い 5月20日支払い
経理 4月20日支払い分がそのまま4月の費用となる 4月分の基本給を未払費用として計上する処理が必要
財務 お金が出るタイミングが早いので資金繰りには不利 お金が出るタイミングが遅いため資金繰りには有利

月給制の場合は当月払いしている企業も多くありますが、残業代・遅刻早退控除など勤務実績が確定しないと支払えない手当のみ翌月で精算する方法です。

一方で全て勤務実績に応じて計算する時給制や日給制は当月払いには馴染みません。

MEMO
当月払いにした場合、基本給と残業代の支払いタイミングで月ズレが生じます。給与担当者から見れば一緒のタイミングで支払われた方が分かりやすいですから
・当月払い=経理担当には分かりやすく給与担当には分かりにくい
・翌月払い=経理担当には分かりにくく給与担当には分かりやすい
と言えます。
なお費用計上する上での経理処理について一般的なもので記載しています。会社ごとに違うケースもあるため、詳しくは税理士にご相談ください。

雇用形態や勤務形態別の支払い日

企業全体で締め日と支払い日が統一されている場合はシンプルです。

しかし企業によっては
・社員は当月払い、アルバイトは翌月払い
・社員は20日払い、アルバイトは末日払い
などと違うルールを設けている場合もあります。

雇用形態ごとに支払い日を変えると出金タイミングが分散させるので、特に資金繰りが安定しない時期には有効な面があります。

しかし煩雑なルールはミスにもつながるので合理性のない差異を設けることは事務処理を煩雑にするだけです。

まとめ

  • 締め日と支払い日は企業の考え方次第
  • ただし毎月1回以上、一定期日を定めて支払うこと
  • 月給制の場合は当月払いか翌月払いかで経理処理や出金時期が変わる

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