社労士・岩壁
従業員の教育訓練のために助成されるものが人材開発支援助成金です。その中でも教育訓練のための有給休暇制度の自発的取得で助成金が受給できる教育訓練休暇付与コースについて紹介します。従業員の教育したいけど経費や人件費の負担が…とお考えの方は人材開発支援助成金を検討してはいかがでしょうか。
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全体概要
人材開発支援助成金は労働者の能力開発促進、キャリア形成推進のための助成金です。
人材開発支援助成金には次の7つのコースがあり、研修・教育の様態によって助成金が異なります。
- 特定訓練コース
- 一般訓練コース
- 教育訓練休暇付与コース
- 特別育成訓練コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
この記事では有給休暇制度の自発的取得で助成金が受給できる教育訓練休暇付与コースについて解説します。
教育訓練休暇付与コース
概要
教育訓練休暇付与コースは次のような計画をしたい企業が受給できる助成金です。
- 従業員の能力向上のため
- 従業員が自発的に訓練を受けるための休暇制度導入
休暇については短期(数日間~)と長期(数ヵ月~)の2パターンがありますが、長期休暇は経営上導入が容易でない企業が多いと思いますので、当記事においては短期のコースについて言及いたします。
教育訓練休暇付与コースの重要ポイントを挙げると下記のとおりです。
- 正社員が3年間で合計5日以上の教育訓練休暇を自発的に取得しなければならない
- ただし1年間に最低1人は教育訓練休暇を取得しなければならない
- 業務命令、通常業務付随の研修、自社研修などは対象外
- 計画期間前に教育訓練休暇制度を導入済の場合は対象外
また規模に応じて次のような制限もあります。
- 正社員100人未満の企業 ⇒3年間で5日以上取得者が1人以上
- 正社員100人以上の企業 ⇒3年間で5日以上取得者が5人以上
対象者
この人材開発支援助成金(教育訓練休暇付与コース)の助成対象となる従業員はいわゆる正社員が対象となります。
有期契約や短時間契約の従業員が当休暇を取得しても助成金の対象とはなりません。
事業所が複数ある場合は全ての事業所でこの教育訓練休暇を導入する必要があります。
助成金額
業種 | 賃金助成 | 経費助成 |
---|---|---|
短期休暇 | × | 300,000円<360,000円> |
長期休暇(参考) | 6,000円<7,200円> | 200,000円<240,000円> |
<>内は生産性が向上した場合
注意
短期休暇には賃金に対する助成はありません。長期休暇の場合は最大で150日となり、助成対象労働者数は正社員の雇用保険被保険者が100人未満の企業は1名まで、100人以上の企業は2名までです。経費助成については1度限りです。
手続きの流れ
手順1
制度導入・適用計画の提出
他の助成金同様に、事前に計画を都道府県労働局に提出する必要があります。この人材開発支援助成金(教育訓練休暇付与コース)は計画期間が3年間固定の助成金です。計画初日から起算して6か月前から1か月前までに計画を提出しなければなりません。
注意
人材開発支援助成金(教育訓練休暇付与コース)を受給するにあたっては年次有給休暇として取得したものは含みません。人材開発支援助成金(教育訓練休暇付与コース)の趣旨に合致する休暇制度を新たに設ける必要があります。
手順2
就業規則の作成・改定
提出した計画書に沿って就業規則の改定を行います。(計画期間前に導入済の場合は助成金対象外)その際には就業規則の施行日を明記し、事業所が複数ある企業の場合は全ての事業所で制度導入の必要があります。なお、就業規則には周知義務がありますので、こちらも忘れずに行ってください。
10人未満の事業所
10人未満の事業所は労働基準監督署への就業規則届出義務はありませんが、助成金受給にあたっては就業規則を労働基準監督署に届け出ることが望ましいです。ただし就業規則の実施に関する申立書を作成すれば、労働基準監督署への届出に代えることが可能です。(10人以上の場合は必ず届け出てください)
手順3
取り組みの実施
計画期間内に対象従業員に対して教育訓練休暇を付与して、自発的に取得をするよう促してください。ポイントは次のとおりです。
- 3年間で合計5日以上
- 1年間に最低1人は休暇取得
- 業務命令、通常業務付随の研修、自社研修などは対象外
手順4
支給申請
支給申請期間は計画終了日の翌日から2ヵ月以内です。助成金全般に言えますが、期限に遅れた場合は支給されませんのでご注意ください。審査が無事に通れば助成金が受給されます。
まとめ
- 正社員が3年間で合計5日以上の教育訓練休暇を自発的に取得しなければならない
- ただし1年間に最低1人は教育訓練休暇を取得しなければならない
- 業務命令、通常業務付随の研修、自社研修などは対象外