慶弔見舞金の相場と規程作成ポイント

社労士・岩壁

会社の福利厚生として慶弔見舞金を支給している会社は多いと思いますが、 同じ支給事由なのに従業員によって金額が違うと不満の種になります。小さい企業では社長の気分で決まることもあるかもしれません。金額は会社としての決めごとなので必ずしも相場に合わせる必要はありませんが、従業員への公平性を保つためには慶弔見舞金規程は機会を見て整備しましょう。

慶弔見舞金とは

慶弔見舞金は会社の福利厚生の一環として金銭を支給するもので、次のような事由に対して支給が行われます。

  • 婚姻 → 結婚祝金
  • 出産 → 出産祝金
  • 本人や親族の死亡 → 死亡弔慰金
  • 病気やケガ → 傷病見舞金
  • 被災 → 災害見舞金・罹災見舞金

会社として慶弔見舞金を支給しているのであれば「人によって対応が変わる」ことは不満の種になります。

「この金額でいいのかな?」と毎回迷っている時間もムダになりますので、就業規則とあわせて慶弔見舞金規程のルールも整備していきましょう。

慶弔見舞金の相場

以下では労務行政研究所が行った「慶弔見舞金、慶弔休暇に関する実態調査」(2017年)と、筆者経験の両方の観点から相場感について記載します。

  実態調査 筆者経験 筆者経験の補足
結婚祝金 約4万円 2~3万円 2回目以降は減額ルールが定められている場合もあり。
出産祝金 約2万円 1~2万円  
死亡弔慰金(本人・業務外) 約23万円 5~30万円 勤続年数や役職によって決まるケースが多く、過去の功績により上乗せ支給ができる旨の規定を置いている企業もあり。業務上の場合は業務外よりも多めの支給となり、事情によって”都度決める”としている企業も多い。
死亡弔慰金(配偶者) 約5万円 3万円 従業員と近い存在になるほど金額は多めに設定されることが一般的。なお親族のどの範囲まで支給対象に含むかは企業ごとの考え方により、配偶者・子・父母は支給対象となることが大半で、一方、祖父母や配偶者の父母は同居を要件にするケースも多い。
死亡弔慰金(その他親族) 約3万円弱 0.5~1万円 従業員と近い存在になるほど金額は多めに設定されることが一般的。なお親族のどの範囲まで支給対象に含むかは企業ごとの考え方により、配偶者・子・父母は支給対象となることが大半で、一方、祖父母や配偶者の父母は同居を要件にするケースも多い。
傷病見舞金(業務外) 約1万円 0.5~1万円 労災による傷病の場合は1~2万円加算することが多く、長期に渡る場合は追加見舞金の規定を置いている場合あり。
傷病見舞金(業務上) データなし 3万円 業務外と比べて1~2万円加算することが多く、長期に渡る場合は追加見舞金の規定を置いている場合あり。また死亡弔慰金同様に、事情によって”都度決める”としている企業も多い。
災害見舞金 約15万円
(全損の場合)
3~10万円 災害の程度により決定し、全損の場合は10万円以上が多い。世帯主でない・扶養家族がいない等の条件がある場合は減額(半額)になるケースもある。
参考 慶弔見舞金の支給実態(労務行政研究所)日本の人事部
注意
実態調査は上場企業が中心です。一方、筆者経験は今まで在籍した企業やお客様先等(概ね300人以下の規模)を前提としています。

慶弔見舞金の支給義務

原則として支給義務はない

慶弔見舞金は法律上の支給義務はありません。

どういった事由に対していくら支給するのかは会社が自由に決められますし、極論、支給しなくても違法ではありません。

労働基準法上では支給義務のある賃金の定義を以下のように規定しています。

この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

労働基準法第11条

労働基準法上の賃金は”労働の対償”であることが条件になりますので、恩恵的・福利厚生的に支給している場合は賃金とはなりません。

労働基準法の賃金とは”支給義務が生じる”という意味で捉えてください。

支給義務が生じる場合

慶弔見舞金が恩恵的・福利厚生的なもので労働基準法上の賃金とならない場合でも、就業規則や慶弔見舞金規程等により支給条件が明確にされている場合には支給義務が生じます。

行政通達でもそのように解釈をしています。

退職金、結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさないこと。但し退職金、結婚手当等であつて労働協約、就業規則、労働契約等によつて予め支給条件の明確なものはこの限りでないこと。

昭和22年09月13日発基第17号

支給義務を生じさせないために「規程化しない」という選択肢はあるかもしれませんが、実質的に支給することが不文律になっている場合は賃金と見なされるケースもあるため注意が必要です。

社会保険と税金の取り扱い

社会保険

慶弔見舞金は社会保険料の対象とはなりませんので、算定基礎届や月額変更届などの保険料見直しにおいては給与額に含める必要はありません。

参考 算定基礎届の記入・提出ガイドブック厚生労働省(3ページ目:社会保険料対象となる報酬を参照)

税金

一般的には社会通念上相当な金額であれば非課税であり、個人に対して所得税や住民税はかかりません。

参考 所得税法基本通達28-5国税庁

ただしこの”社会通念上相当”の明確な基準はなく、その人の社会的地位や社内での役職なども総合的なものとなるため、判断が非常に難しい問題でもあります。

前記した金額であれば一般的な金額になるため課税対象と見なされる可能性は低いと言えますが、必ずしもそれを保証するものではありません。

判断に迷う場合は必ず税務署や顧問税理士にご相談ください。

慶弔見舞金規程を作成する上での注意点

社労士・岩壁

基本は会社が自由にルールを決めて良いのですが、特に判断が曖昧になりがちな部分について言及します。

勤続年数の考え方

勤続年数により支給の有無や金額に差をつける場合の注意点です。

社員とアルバイトで異なるルールにしている企業も多くありますが、アルバイトから社員登用された場合にアルバイト時代の勤務を勤続年数としてカウントするかどうか注意が必要です。

特にアルバイトの場合はフルタイムの人も週1~2日の人も混在します。

一律で勤続年数としてカウントするのかしないのか、勤務時間に応じてカウントするのか明確にする必要があります。

会社が任意に決める休職制度も同様です。

通常、退職金計算の場合は休職期間を勤続年数に含めないことも多くありますが、計算の煩雑さを回避するために慶弔見舞金の場合は休職期間を勤続年数から除外するようなケースはあまり多くありません。

社労士・岩壁

退職金に比べて慶弔見舞金は高額ではないため、休職期間は考慮しなくても良いのでは?というのが私個人の考えです。

不就労日の考え方

特に傷病見舞金の場合に判断が曖昧になりがちです。

傷病見舞金では「●日以上勤務できない場合」といった条件を付けるケースが大半ですが、この「●日」が暦日数なのか、所定労働日数なのかが曖昧なケースです。

暦日数が基準であればきちんと「暦日数で●日」、所定労働日数が基準であれば「欠勤●日」などと定めましょう。

注意
欠勤は所定労働日に対しての概念ですから、欠勤と書いた場合は暦日数ではなく必然的に所定労働日基準になります。

また、この不就労については年次有給休暇等の使用有無が条件かどうかも判断を迷わせることがあります。

  • 休んでいればそれで良いのか(年次有給休暇等の使用OK)
  • 給料が支払われないことが条件なのか(年次有給休暇等の使用NG)

年次有給休暇を消化中でも支給するのか・しないのかも明確にしましょう。

従業員間で支給事由が重複する場合

同じ会社に夫婦で勤務している、兄弟姉妹で勤務している。

このような場合は支給事由が重複する場合がありますから、それぞれに支給するのか、一方にしか支給しないのかを明確にする必要があります。

  • 社員同士が結婚
    ⇒両者に支給するケースが多い
  • 夫婦ともに従業員で妻が出産
    ⇒どちらか一方に対して支給するケースが多い(妻側は産休中になるため、実務的には夫側の従業員に支給)
  • 兄弟ともに従業員でその親が亡くなった
    ⇒家族の中の一人(喪主または年長者)に対して支給するというケースが多い

喪主や世帯主

死亡弔慰金

死亡弔慰金にて、従業員が喪主の場合は金額が多少上乗せされるケースがあります。

後述している慶弔休暇も同様で、喪主の場合はその立場上、休暇日数が少し多めに設定されることが一般的です。

世帯主

災害見舞金で従業員が世帯主と非世帯主の場合で支給金額に差をつけるケースがあります。(同様に扶養家族の有無も判断ポイントにする企業もあります)

親族の範囲

父母

広義では「配偶者の父母・養父母」も含まれていると読めます。

実父母と養父母は同じ扱いにするケースが多いですが、配偶者の父母は同居が要件になるケースも多いため、これらも明確にしておく必要があります。

祖父母

こちらも父母と同様に、自分の祖父母なのか配偶者の祖父母も含むのかを明確にしなければなりません。

また慶弔見舞金に限らず慶弔休暇でも同様ですが、祖父母は離れて暮らしていることも多々あります。

従業員との同居を要件にするのかどうかも要検討です。

慶弔休暇との整合性

慶弔見舞金とセットで考えるのが慶弔休暇です。

一番楽な考え方は、慶弔見舞金の支給対象となる親族と、慶弔休暇の対象となる親族を同じにすることです。

しかし弔事においては参列の日数も考えると、例えば次のように、休暇の方が慶弔見舞金の対象範囲より広めに定めることが一般的です。

  • 慶弔見舞金
    ⇒子と父母までが支給対象
  • 慶弔休暇
    ⇒3親等以内の血族・2親等以内の姻族が休暇対象

同一支給事由が何回も発生する可能性

結婚祝金が想定されます。

複数回の婚姻が法に触れるわけではありませんが、企業によっては2回目以降は減額とするケースも珍しくはありません。

災害等の不可抗力と違い、婚姻・離婚は本人の意思に基づくもの、と言えるからです。

慶弔見舞金規程も就業規則の一部

10人以上の事業場は就業規則を作成して、労働基準監督署へ届け出る義務があります。

届出義務がある就業規則とは”就業規則”という名称のものだけではなく、従業員の労働条件に関するルール・規程は全て含んで就業規則という取り扱いです。

企業によって就業規則の定め方は次の2パターンに分けられます。

  1. 基本ルールを就業規則に定め、各論は別規程として定める
  2. 全てを就業規則の中で規定する

筆者の経験上では前者のケースが多いと感じます。

例えば基本ルールを就業規則で定め、次のような各論を別規程として定める方法です。

  • 有期契約社員に適用されるルール=有期契約社員用就業規則
  • 給与に関するルール=給与規程
  • 慶弔金に関するルール=慶弔見舞金規程
  • 育児や介護に関するルール=育児介護休業規程

労働基準監督署へ就業規則を届け出る場合は、これら別規程も全てまとめて届け出る必要があります。

注意
労働基準監督署へ届出義務がある就業規則の一部と見なされる規程類は、あくまでも従業員に適用される労働条件に関するルール・規程です。就業や労働に関係しない規程類はそもそも労働基準監督署へ届け出る必要はありません。
(労働条件に関係しない規程例)
・定款
・取締役会規程
・経理規程、など

まとめ

  • 慶弔見舞金は会社ごとに支給金額や条件を決められる
  • 一般的な金額であれば所得税や住民税はかからない
  • 公平性を保つためにルール化推奨

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