社労士・岩壁
その違いも整理していきますね。
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顧問契約しない企業の理由
社労士という資格や業務をそもそも知らない
認知度が低いのは社労士側の課題です。
しかし当記事をお読みになっている皆さまは少なくとも社労士の資格をご存知ですよね。
社内の人員配置で適材適所と言われるように、外部リソースの利用も適材適所です。
これからの時代は積極的に外部リソースを使っていく時代になりますから、社労士も外部リソースとして例外ではありません。
もっと社労士という仕事・業務を世に知ってもらう努力が必要です。
事務を内製化している(委託する必要性・緊急性がない)
経理担当者に社会保険や給与を任せている企業に多いですが、実はその事務処理が間違っていることも多くあります。
私の顧問先や会社員時代の経験では、給与計算や社会保険手続きで何かしらのミスをしていた企業は約70%にも上ります。(単発ミスではなく、ミスに気付かずずっと継続中だったという意味)
実は給与計算はけっこう間違えられがちな事務で、その中でも特に多いミスは次のような社会保険料徴収の誤りです。
- 保険料率が変更になっているのに以前のまま
- 健康保険や厚生年金を日割りしている(日割はありません)
- 健康保険や厚生年金が毎月変わっている(原則保険料は固定)
- 保険料の徴収開始月を誤っている
専任の給与担当者を置いている企業もありますが、その場合であっても社労士は外部の労働相談窓口といった活用は可能です。
様々な顧問先をもつ社労士を外部アドバイザーにすることで、社内だけでは分からないノウハウ提供を行えます。
税理士に委託している
このケースが現実に多くありますが、税理士は社会保険のプロではなく手続き代行もできません。(もちろん知識として社会保険に詳しい税理士の方はいます)
社労士にも税理士にも法律上外注できる分野が分けられていますから、必要に応じて使い分けなければなりません。
社会保険・労働保険の書類作成や申請代行は社会保険労務士の業務です。
社会保険労務士と顧問契約した方が良い企業
以上のことから、次のような企業は社会保険労務士と顧問契約した方が良いと言えます。
- 外部リソースを使って事業のコア業務に集中したい
- 事務担当を直接雇用するより人件費が安く上げたい
- 税理士だけではカバーできない社会保険領域をカバーしたい
社会保険労務士と税理士の違い
一般的な管理部門の仕事内容
企業の管理部門の仕事をしたことがない場合、総務・人事・経理・財務など管理部門の職種の違いをきちんと分かっている会社員は少数です。
確かに仕事をしている当事者以外では意識しない限りその違いは分からないかもしれませんね。
管理部門の仕事内容はおおむね下記のようになります。
- 総務=株主総会、取締役会、備品管理、秘書
- 人事=給与計算、社会保険、福利厚生、採用、研修
- 経理=入出金管理、決算
- 財務=予実管理、借入・返済などの資金繰り
(※)あくまで一般的なもので、企業により若干異なります。
社労士と税理士を企業の職種で例えるなら「社労士=人事」「税理士=経理(&財務)」と言えます。
社会保険労務士と税理士の業務の違い
社労士も税理士も国家資格ではありますが管轄省庁も業務内容も異なります。
社労士 | 税理士 | |
---|---|---|
管轄省庁 | 厚生労働省 | 財務省(国税庁) |
法人向け業務例 | ・手続き代行(社会保険、労働保険、雇用助成金など) ・就業規則、36協定の作成 ・個別労働紛争のあっせん代理(特定社労士のみ) ・労働問題や人事制度に関する相談全般 |
・会計帳簿の作成 ・決算業務 ・税金や経理に関する相談全般 |
個人向け業務例 | ・年金請求手続き代行や相談 ・個別労働紛争のあっせん代理(特定社労士のみ) |
・確定申告書の作成 ・個人にかかる税金(相続税など)に関する相談 |
- 社労士 = 労働基準監督署・年金事務所・ハローワークに提出する書類。
- 税理士 = 税務署に提出する書類。
大ざっぱには上記のように認識いただければ大丈夫です。
社会保険労務士が必要になる場面
個人事業主で従業員がいない場合
個人事業主で従業員がいなければ社労士との契約は不要です。
個人事業主は自分で社会保険料を支払い、自分で確定申告をして税金の精算をします。
必要な生活費は自分で判断して口座から引き出すため給与計算という過程もなく、人を雇用していなければ労働問題も起きませんし、業務で社労士が必要になる状況が起こりません。
ただし「法人化を検討している(社会保険の加入)」「人の採用を検討している」ような場合は、事前相談できる社労士はいた方が良いと思います。
法人で従業員がいない場合
法人であれば社長一人であっても役員報酬の支払いがあり給与計算業務が発生し、健康保険・厚生年金にも加入しなければなりません。
従業員がいないケースだと決算や給与計算をセットで税理士のみと顧問契約している法人も多いと思います。
しかし前記のとおり税理士は社会保険手続き代行はできません。
また、従業員の採用を考えているのであれば、早めに管理体制を社労士に相談し事前にトラブル防止策を講じることが鉄則です。
人のトラブルは起こってしまったら最後、時間と労力を消耗するだけで企業にとって何もメリットはありません。
継続的な顧問契約までは必要なかったとしても、スポットで社会保険手続きや労働相談ができる社労士はいた方が良いでしょう。
従業員ありの場合(個人・法人問わず)
従業員がいる場合は顧問契約をぜひ検討してください。
従業員がいれば給与計算、社会保険・労働保険手続きが発生しますし、就業規則を含めた制度作りや労務管理は避けては通れません。
月次業務で社会保険労務士が関わる場面が多分に出てきますし、日常的に労務相談も発生してくるでしょう。
しかし、残念ながら経営者で労務管理に長けている方は少数であり、「労務管理が行き届かず労働トラブルが発生した」というケースは珍しくありません。
また社長自身が社会保険手続きをすることもあるかもしれませんが、社長にとって重要なことは「いかに雑務から離れるか」です。
経営者の仕事は売上・ブランディング・事業展開などを含めた企業の成長です。
文字通り“経営”でありトラブル対処や事務作業をすることが仕事ではありませんから、不要な時間を割かないためにも専門家の力を借りてトラブルの芽を先に摘んでおくことが重要です。
社労士・岩壁
まとめ
- 専門業務は専門家に任せた方が人件費が安上がり
- 社会保険は税理士ではカバーできない領域のため社労士とすみ分けがある
- 顧問契約の要不要
⇒ 個人事業主で従業員がいなければ不要
⇒ 社長一人法人であれば検討(特に採用を考えている場合)
⇒ 法人、個人問わずに従業員がいる場合は要検討