社労士・岩壁
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検討ポイント
年次有給休暇を就業規則で定める場合、労働基準法と同じ基準にする内容と異なる基準にする内容を精査する必要があります。
もちろん全て労働基準法の基準と同じにしても問題はありません。
しかし、ある程度人数が増えてきた時には事務処理の手間を考えて「付与日を統一する」「会社の福利厚生を手厚くするために付与日数を増加させる」等といった内容を検討することがあります。
以下ではそれぞれ検討するポイントを列挙していきます。
付与日
付与日は労働基準法上、入社の半年後から付与しなければなりません。
ここでいう”入社”はその企業に雇用された日が基準になります。
例えば新卒入社で4月1日入社予定の大学4年生を3月1日からアルバイト雇用しているようなケースでは、3月1日が基準となるため年次有給休暇は9月1日に付与しなければなりません。
同様に、1月1日からアルバイト雇用、4月1日に正社員登用したようなケースでも、1月1日の半年経過した7月1日に初年度の年次有給休暇が発生します。
企業には中途採用者も含めて、入社日が様々な社員が混在します。
ある程度人数が多くなってきた場合、入社後半年基準のままでは事務処理も煩雑化しますので、付与日の統一を検討してみても良いでしょう。
付与日数
労働基準法上での付与日数は下記のとおりです。
雇い入れ後 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
※6年6ヵ月以降は20日で固定。
この基準を下回ることはできません。
時効
年次有給休暇は労働基準法上、2年で時効になります。
しかし、日本の労働環境の実態を考えると、2年で付与された日数を使い切っている人は必ずしも多くありません。
残念ながら時効で付与された多くの日数が消滅しています。
そこで、時効消滅するはずの日数をプールしておいて、長期入院等のやむを得ない事情の場合のみ遡及して使用できる等といったルールも福利厚生としては考えられます。
働き方改革関連法で変わったルール
2019年4月1日より、10日以上年次有給休暇が付与されている場合は1年以内に5日以上の取得が義務付けられました。
従業員が自発的に5日以上取得した場合はそれで問題ありませんが、5日以上取得しないのであれば会社指示により取得させなければなりません。
なお、夏季休暇など元々存在した年次有給休暇以外の休暇をこの5日以上の取得として取り扱う、等の不利な措置は認められていません。
就業規則規定例
第●条(年次有給休暇)
入社日から6ヵ月間を超えて継続勤務しその間の所定労働日数の8割以上を出勤した場合、およびその後1年ごとに区分した期間を継続勤務し所定労働日数の8割以上を出勤した場合には次表に定める年次有給休暇を付与する。
雇い入れ後 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
2 週の所定労働時間30時間未満、かつ週の所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の銃魚員に対しては、所定労働日数に応じて年次有給休暇を比例付与する。
3 出勤率の算定にあたって次の期間は出勤したものとみなす。
(1)業務上の負傷・傷病による休業期間
(2)年次有給休暇取得期間
(3)産前産後休業期間
(4)育児介護休業法による休業期間
第●条(年次有給休暇取得日の賃金)
年次有給休暇の取得日は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。
第●条(年次有給休暇の繰り越しと時効)
付与された年次有給休暇のうち次の付与日までに取得しなかった日数は、付与日から2年以内に限り繰り越して使用できる。付与日から2年を超えても使用されなかった年次有給休暇の日数は時効によりその権利を失う。
第●条(年次有給休暇の計画的付与)
従業員代表との書面による協定がある場合、会社は年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について事前に時季を指定して取得させることがある。
第●条(年次有給休暇の時季変更)
会社は従業員が請求した年次有給休暇取得を認めることが事業の正常な運営を妨げる場合、請求された年次有給休暇の取得時季を変更することがある。
第●条(会社からの時季指定)
従業員で年次有給休暇が10日以上付与される場合、その日数のうち5日は付与日から1年以内の期間において会社が取得時季を指定する。ただし従業員が自ら時季指定をして取得した日数および第●条の計画的付与により取得した日数については、その日数を5日から控除する。
なお、この他にも以下のような定めを追加するケースもあります。
- 手続き方法
- 事後申請(病気などやむを得ない場合)
- 半日や時間単位の取得
- 残余日数の買取条件(※)
(※)年次有給休暇の買取は無条件に認められているわけではありません。
余った年次有給休暇の買取義務はある?まとめ
- 労働基準法の基準を下回らなければ就業規則で自由に定められる
- 年10日以上付与されている場合はそのうち5日以上を取得させなければならない
- ただし自発的に5日以上取得した場合は会社に取得させる義務はない