社労士・岩壁
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就業規則の構成は大きく2種類
就業規則の作り方は大きく2つのパターンに分けられます。
- 規程の種類ごとに別冊(別データ)にしている
- 全てを一つの規程内にまとめている
きちんと法的な要件を満たしているのであれば、どちらが正解・不正解ということはなく、企業ごとの事情や管理の手間などを考慮して決めるべきと言えます。
別冊作成のパターン
メリット
雇用形態別の条件相違点が比較されにくいというメリットがあります。
もちろん絶対ではなく、見比べれば違っている箇所を調べ上げることはできます。
しかし、例えばアルバイト社員が正社員や契約社員用の就業規則とアルバイト社員用就業規則とじっくり比較することは通常は考えにくいので、どういった点が異なっているのかは一見分かりにくいと言えます。
雇用形態によって制度に差をつけるのは企業にとって当たり前のことなので、不用意な不満を生まないためには就業規則は雇用形態別に用意した方が無難と言えます。
デメリット
規程が多くなればなるほど管理が大変になります。
規程別に管理しなければならないので、場合によっては規程管理番号を付けたり、改訂履歴なども含めた管理表を作ったりしなければなりません。
また、雇用形態別の就業規則を設けている場合でも服務規定や懲戒規定などは共通していることも珍しくなく、共通規定を改定しようと思うとその数の就業規則分だけ改定作業が必要となるため、改定の手間はかかります。
就業規則は全て周知する必要あり
就業規則は全て周知しなければなりません。
例えばアルバイト社員に対して正社員や契約社員用の就業規則を見せない、という対応は周知義務違反です。
メリットで比較がされにくいと書きましたが、あくまで可能性の問題であり「比較させないため一部しか見せない」という対応は就業規則の有効性に関わります。
ですから適法に就業規則を運用しようと思えば「誰でも見られること」が前提にあります。
雇用形態別に制度を設けることは全く問題ありませんが、なぜそのような差がついているのかをきちんと言えるような合理的な制度運用が求められます。
雇用形態別の役割や期待値などを明確にしておくことで、制度に差をつける合理性を高めていくしかありません。
別作成でもデータだけまとめる
企業によっては「別規程になっているがデータは1つ」というケースもあります。
その場合「諸規程集」等という名称の表紙を作成し、各規程を目次としてデータは1本で管理する方法です。(目次にページ番号を振るケースが一般的)
【例】
諸規程集
就業規則
契約社員用就業規則
給与規程
育児介護休業規程
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まとめて作成のパターン
メリット
まとめて作成するメリットは書類のスリム化です。
就業規則、給与規程、育児介護休業規程などと分けずに、就業規則内に全て集約できます。
この場合は給与規程部分を「第●章 給与」、育児介護休業規程を「第●章 育児・介護」などと章扱いとして詳細に定めることで就業規則内で完結とします。
デメリット
条文数によりますがページ数が膨大になり、また条文ごとに適用範囲をきちんと指定しないと全員に適用されてしまいます。
別冊作成の場合は雇用形態別に適用されない制度は定めなければ良いだけですが、まとめて作成する場合は条文ごとに適用対象を明確にしなければなりません。
作成の手間はこちらの方がかかると言えます。
また同じ規則にまとめられているため、契約社員やアルバイト社員から見れば、正社員との差が一目瞭然となるため不満を生みやすくなります。
雇用契約より就業規則が優先
就業規則では画一的なルールを定めることができます。
しかし一方、雇用契約よりも就業規則が優先するため、雇用契約の特約として就業規則よりも不利な条件を付すことはできません。
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
労働契約法第12条
例えば就業規則には「住宅手当を支給する」となっているのに、特定の従業員の雇用契約で「住宅手当を支給しない」といった特約を付すケースです。
この場合は労働契約法に従って就業規則の定める条件が適用されることとなります。
従業員ごとに手当等の待遇を変えたいのであれば、その定めを置いてはいけません。(就業規則に定めがなければ個別の雇用契約において条件を変えることが可能)
ただし個別に条件を変える場合であっても不合理な賃金格差はトラブルにつながりますので、差をつける場合であっても合理性のある内容としてください。
なお就業規則に「雇用契約に別の定めがある場合はそちらを優先する」という条項を入れておいて、就業規則よりも不利な条件を雇用契約に盛り込むことは前記の労働契約法に違反するため無効ですのでご注意ください。
よって就業規則に定める内容は適用範囲の従業員に対して一律適用されるものだけを定めるようにしましょう。
まとめ
- 法的にはどちらでも問題ない
- 会社規模や条文数によって管理・運用のしやすさが異なる
- 別冊にした方が雇用形態別に比較されにくい