会社設立後の社会保険加入タイミング

社労士・岩壁

会社設立をした場合、どのタイミングで社会保険に加入しなければならないかご存知ですか?社会保険加入は起業して強制適用事業所に該当した場合は加入が義務になり、選択制ではありません。社会保険は会社負担保険料がかかるため敬遠する経営者もいるかもしれませんが、経営者自身や従業員を守るものでもあります。

社会保険の種類

社会保険は広い意味で言うと次の4つを指します。

  1. 健康保険(+介護保険)
  2. 厚生年金
  3. 雇用保険
  4. 労災保険

求人情報などに「社会保険完備」と書かれていますが、これは「健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の4つに会社としてきちんと加入しています」という意味です。

狭い意味では①健康保険②厚生年金の2つを社会保険、③雇用保険④労災保険の2つを労働保険と言う場合もありますが、この記事では便宜的に4つ全て含めて社会保険と呼ぶことにします。

(※)介護保険は40歳以上65歳未満の人が加入対象。

社会保険の加入義務

健康保険・厚生年金

強制適用事業所

法人、または個人であっても常時5人以上の従業員を使用する一定の事業所(製造業、土木建築業など)

法人は強制適用事業所なので社長一人法人であっても加入は義務です。

任意適用事業所

強制適用事業所以外の事業所で厚生労働大臣の認可を受けた事業所

MEMO
任意適用事業所が会社側の意思で加入するためには従業員(加入要件を満たす者)の半数以上の同意が必要です。しかし従業員側からの加入要請であった場合は、加入希望者が半数以上であっても会社が加入申請をするかどうかは任意であり義務ではありません。

雇用保険

強制適用事業所

従業員を1人でも使用している事業所

ただし、従業員1人であってもその従業員が雇用保険加入義務を満たさない場合(週20時間未満の労働など)は強制適用にはなりません。

暫定任意適用事業所

個人経営で従業員が5人未満の農林水産業

MEMO
暫定任意適用事業所が会社の意思で加入するためには従業員(加入要件を満たす者)の半数以上の同意が必要です。また、健康保険&厚生年金と異なり、従業員側からの加入要請であった場合は、加入希望者が半数以上であったら加入申請は義務となります。

労災保険

強制適用事業所

従業員を1人でも使用している事業所

労働者が1人でもいれば労働時間や雇用形態に関係なく労災保険の対象となります。

労災保険は労働者であれば適用される保険のため、「何時間以上の労働」といった要件はありません。

暫定任意適用事業所

農林水産業のうち一定の事業所

MEMO
農業、林業、水産業、それぞれで要件が異なります。会社側の意思で加入申請する場合は従業員の同意は不要です。また、従業員の過半数が加入希望した場合は加入申請が義務となります。

社労士・岩壁

法人に限って言うと
・健康保険&厚生年金=法人設立時に加入
・雇用保険&労災保険=労働者を雇い入れたら加入

これが原則だと覚えておけば良いと思います。

給付内容

社会保険には様々な給付があります。

「保険料負担が重たい」という考えもあるかもしれませんが、いろいろな恩恵を受けられるという視点も大事です。

健康保険

療養の給付

一番代表的で良く使われる給付で、一般に“3割負担”と呼ばれるものです。(年齢や所得によって1割又は2割)

10,000円の医療費が3,000円の支払いでOK(残り7,000円は最終的に加入している健康保険組合などの保険者が負担)

出産手当金

産前産後期間中に休んでいて給与を受けられない場合に支給される手当です。(年次有給休暇を消化している場合は支給されません)

出産育児一時金

出産費用として42万円支給されます。(産科医療補償制度に加入している機関で出産した場合)

傷病手当金

ケガや病気で休んでいて給与を受けられない場合に支給される手当です。(出産手当金同様に、年次有給休暇を消化している場合は支給されません)

なお労災によるケガや病気の場合は、労災保険から補償されるため健康保険からの手当支給はありません。

高額医療費

医療費の自己負担額が一定額を超えないように設けられている制度で、年齢や所得によりその上限は異なります。

その他

給付内容や条件は加入している健康保険組合により異なる場合があります。

参考 保険給付の種類全国健康保険協会

厚生年金

年金の給付は老齢・障害・死亡の3種類です。

老齢年金

年齢や加入期間などの条件を満たした場合に受けられます。

世間で年金といえば、この“老齢年金”を指していうことが多いです。

厚生年金の場合、老齢年金は定額部分と報酬比例部分の2種類で構成されます。

現在段階的に受給年齢が引き上げられており、男性は1961年(昭和36年)4月2日以降生まれ・女性は1966年(昭和41年)4月2日以降生まれより65歳からの支給となっています。

参考 老齢年金日本年金機構

障害年金

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。

参考 障害年金日本年金機構

遺族年金

遺族年金は国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。

続柄や年齢により受給制限があるため、一般的にいう遺族よりも受給できる範囲は狭くなっています。

参考 遺族年金日本年金機構

社労士・岩壁

年金制度は専門家でも難解に思うくらい複雑ですから
まずは「老齢・障害・死亡」の3つについて給付がある、ということを知っていただければ十分です。年金で良いニュースはあまり聞かないのが実情で残念ですが、しかし障害や死亡に対する“保険”でもあるという点は大切です。

雇用保険

基本手当

一般に“失業保険”や“失業手当”と呼ばれるのがこの基本手当です。

加入年数や離職理由に応じて、求職期間中に給付金を受け取ることができます。

参考 基本手当についてハローワーク

高年齢雇用継続給付

60歳以降の賃金額が60歳時点と比較して75%未満に低下した場合に支給されます。

一般的には定年後の再雇用契約でこの給付を受給するケースが多いと言えます。(他社への再就職であっても条件を満たせば受給可能)

参考 雇用継続給付について厚生労働省

育児休業給付

育児休業期間中に給与を受けられない場合に支給されます。

昨今はニュースで保育園問題も大きく取り上げられているため、広く認識されている給付です。

参考 育児休業給付についてハローワーク

雇用助成金

企業が労働条件や就業環境の向上等を実施した時にもらえるお金です。

雇用助成金は会社が払う雇用保険料が財源になっています。

MEMO
雇用助成金は一定条件を満たせば原則受けられるものですが、お金をもらうことが目的ではありません。就業環境の整備・向上の前提をクリアして受給できるものです。

労災保険

業務や通勤に起因するケガや病気を保障するのが労災保険です。

療養補償給付

労災によってケガなどをした場合は医療費がかかりません。(先に自ら立替払いをした場合は全額還付されます)

注意
労災の場合は健康保険は使用できませんので、病院窓口できちんと労災である旨を伝えてください。

休業補償給付

労災によるケガや病気が原因で業務を休んでいて給与を受け取れない場合に支給され、休業4日目から給与額1日あたり80%(特別支給金20%含む)です。

MEMO
休業1~3日目までの保障は下記のとおりです。
・業務災害の場合 ⇒ 事業主に保障義務あり
・通勤災害の場合 ⇒ 事業主に保障義務なし
業務災害と異なり通勤災害は事業主に責任がないため、保障義務がありません。

社労士・岩壁

保険料の部分ばかりに目が行ってしまいますが、社会保険は労働者だけでなく会社自体を守るものという意味もあります。加入義務があるのに未加入であった場合などは事業主責任を問われますから、しっかり手続きをしましょう。

まとめ

  • 社会保険は条件を満たしたら加入義務あり
  • 法人の原則は次のように覚える
    ⇒健康保険&厚生年金は設立時に加入
    ⇒雇用保険&労災保険は従業員を雇い入れたら加入

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