年俸制は残業代が不要は嘘

社労士・岩壁

年俸制というのはあくまでも給与額を決める方法の1つであり、残業代が不要かどうかを決める制度ではありません。残業代が必要かどうかの判断基準は管理監督者に該当するかどうかで、年俸制と残業代は全く別問題になります。

年俸制とは

年俸制とは

年俸制とは給与額を1年間総額で確定した金額を支払う方法です。

1年という単位で毎年年俸額が更改されていくため、成果を求められる役職者や裁量労働制に多く見られる支払い方です。

しかし年俸制はあくまで給与額の決定方法の1つであり、一般社員に適用してはいけないということではありません。

年俸と賞与

年俸制と言っても毎月1回以上は給与を支払う必要があり、一番オーソドックスなのは「年俸額を12ヵ月で割って1ヵ月分を毎月支給」する方法です。

企業によってはこの中に賞与分を含むという扱いにしていることもあります。

例えば「年俸額を16ヵ月で割って1ヵ月分を毎月支給、残り4ヵ月分を年2回(1回あたり2ヵ月分)の賞与として支給」という方法です。

この賞与を含むという方法自体は適切に運用されていれば問題はないのですが、注意を要するポイントがあります。

賞与は本来勤務成績に応じて支給されるものであり、支給額をあらかじめ定めてある場合は労働基準法上の賞与とはみなされません。(昭和22年9月13日付発基第17号)

よって平均賃金や残業代の算定にあたっては、当該賞与の部分も計算に含める必要があります。

参考 年俸制における賞与と毎月払の関係東京労働局

このような支払い方は労働基準法上の賞与には当たらないので、企業がどのような名称で支給しているかは関係ありません。

通常の月給制と同じように、年俸とは別に賞与を支給するというパターンも考えられます。

次のような場合は年俸内に賞与を含まず、業績に応じた賞与を別に支給した方が良いでしょう。

  • 業績に応じてその都度賞与額を定めたい場合
  • 残業代の基礎から除外したい場合
  • 賞与を支払い日に在籍していた人のみ支給対象にしたい場合

なお賞与を年俸内に含まず別支給にした場合は当然給与総額は賞与分だけ年俸額よりも多くなるので、人件費の見通しという意味では年俸制導入のメリットは薄くなります。

年俸制を採用する場合は原則通り12分割で支払った方がメリットも明確です。

年俸制は残業代が不要か

誤解されている方も多いですが年俸制でも残業代の支払いは必要です。

年俸制は年間成果で給与額が算定されるという性質上、残業代支払いが不要な管理監督者やみなし労働時間で働く裁量労働者に年俸制が適用されることが多く、そのために年俸制=残業代が不要という間違ったイメージがまだまだ根強くあります。

一般社員であっても年俸制を適用できないわけではありませんし、管理監督者でない社員が年俸制を適用されている場合は当然残業代の支給対象となります。

年俸制に固定残業代を含めて良いか

含めること自体は可能

前記のように年俸制と残業代支払いは関係がありませんので、年俸の中に固定残業代を含める場合は月給制と同じように考えてください。

もし固定残業代を含む方法にしたい場合は、12分割した月俸内に何時間分でいくらの固定残業が含まれているのか、を明示しなければなりません。

トラブル防止と明朗性を担保するためには基本給部分と固定残業代を分ける方が良いでしょう。

なお前述したとおり、支給額が確定している賞与は残業代の基礎に含める必要がありますのでご注意ください。

労働条件通知書記載例

年俸制で固定残業代を含む場合の労働条件通知書の給与額記載例です。


年俸制6,000,000円

6,000,000円を12分割した月俸500,000円を毎月支払う。
なお月俸には下記のとおり30時間分の固定残業手当を含み、30時間を超えた残業代は別途支給する。

(月俸内訳)
基本給400,000円
固定残業手当100,000円(30時間分)


金額や時間数は仮のものなので、各社に応じた数字を記載してください。

実際の給与明細上も固定残業手当は分けて記載しましょう。

まとめ

  • 年俸制であっても時間に応じた残業代を別途支給する必要あり
  • 年俸内に賞与を含んだ場合は労働基準法上の賞与とはみなされず、残業代や平均賃金の基礎に含まれる
  • 固定残業代を導入する場合は月給の場合と同様に下記3点に注意
     ①通常の賃金と固定残業代を判別できること
     ②見なし残業時間を上回る残業が発生した場合は差額を支給すること
     ③固定残業代に含まれる見なし残業時間数を雇用契約書等で明示すること