社労士・岩壁
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勤務間インターバル制度
勤務間インターバル制度の概要
勤務間インターバル制度とは1日の勤務終了時刻から次の始業時刻まで一定時間を確保することにより、労働者の休息時間や生活時間を確保し健康推進・生活と仕事の調和を図ることです。
働き方改革関連法により勤務間インターバル制度は2019年4月より企業への導入が努力義務となりました。(努力義務なので導入しなくても大丈夫です)
例えば11時間の勤務間インターバルを設ける場合を考えてみましょう。
次のいずれかの方法により一定時間の確保をすることができます。
始業時刻を後ろ倒しする
前日の就業時間から11時間後が次の日の始業時刻です。
例えば毎朝9:00始業で前日23:00に勤務終了した場合、次の日の9:00に出勤すれば10時間のインターバルしかありません。
これを10時始業にすることにより11時間の勤務間インターバルを設けることができます。
この方法を取った場合の特徴は「9:00~10:00は遅刻扱いにならない」「終業時刻も後ろに1時間ズレる」ということです。
フレックスタイム制であれば終業時刻は労働者の裁量で決められますが、固定時間勤務の場合は終業も後ろにズレます。
ただ勤務時間帯がズレていくだけになる危険性もあるので運用には注意が必要で、 この方法を採った場合は次の勤務は残業をさせない等の措置が必要です。
終業の最長時刻を固定する
次の日の始業時刻を後ろ倒しにする場合は、勤務時間帯も後ろにズレ込みます。
それを防止するために前日の勤務時間の最終時刻を決めてしまう、という方法です。
簡単にいうと「●●時以降、残業禁止!」です。
始業時刻を変更したくないという場合に、この方法を導入するメリットがあります。(ただし終業時刻を強制できる企業でないと難しい)
この方法を取った場合の特徴は「勤務間インターバル確保のために強制残業禁止とする」「始業時刻を変更する必要がない」ということです。
一定時刻以降残業を禁止することが難しい業界や社風の場合は、この方法での導入は難しいと言えます。
働いたものと見なす
この方法は始業時刻も終業時刻も変更しません。
「始業時間の後ろ倒し」と同じように勤務間インターバル時間を確保できる時間に出勤させますが、本来の始業時刻と実際の始業時刻の間の時間を労働扱いにしてしまいます。
この方法を取った場合の特徴は「始業、終業ともに時刻の変更はない」「本来遅刻扱いになる時間を労働扱いとする(給与減額なし)」ということです。
労働時間と見なしてしまうので時間単位の有給休暇を与えていることに等しくなりますから、実質的には人件費増です。
労働者にとっては一番うれしい措置ですが企業側の負担は増えます。
あまり勤務間インターバルが発生しないよう労務管理ができる企業であれば、イレギュラー対応が逆に手間になることもあります。
そういう企業であれば事務処理負担の軽減として労働時間と見なす方法を採用しても良いかもしれません。
導入メリット
勤務間インターバルには次のようなメリットがあります。
- 生活と仕事の調和を図りやすくなる
- 睡眠時間の確保(=健康増進)
従業員が寝不足で疲れていると労働時間に反比例するように生産性や集中力は落ちやすくなり、長期的見て従業員が健康的に働くことが企業にプラスになることは間違いありません。
これを機に皆さんの企業でも勤務間インターバル導入を検討してみてください。
向いている企業
勤務間インターバル制度が向いている企業は、従業員がある程度裁量を持って仕事を進められるような企業です。
残念ですがシフト制で動いているような職場(サービス業等)では勤務間インターバルは不向きです。
シフト制はその時間帯に必要な人員数で勤務予定を組んでいますから、勤務間インターバルによって人員不足が発生すれば事業運営自体が難しくなります。
逆にフレックスタイム制など、普段から従業員が自らの裁量で勤務時間を決められるような企業・業種であれば勤務間インターバルは適切に運用しやすいでしょう。
勤務間インターバル導入による助成金
対象企業
勤務間インターバル助成金の支給対象となるのは、次の全てに該当する企業です。
- ① 中小企業(※)
- ② 労災加入している企業
- ③ ③-1~③-3のいずれかに該当する企業
- ③-1 勤務間インターバルを導入していない
- ③-2 9時間以上の勤務間インターバルを導入済だが、対象となる者が当該事業場に所属する労働者の半数以下
- ③-3 9時間未満の勤務間インターバルを導入済
(※)中小企業は下記AまたはBいずれかに該当する業種
業種 | A資本金(出資額) | B常用労働者 |
---|---|---|
小売業(飲食店含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
なお要件に当てはまれば個人事業でも対象となります。
対象取り組み
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
- テレワーク用通信機器の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
機器にはパソコン、スマホ、タブレットは含まず、例えば小売業のPOS装置などの導入が対象となります。
成果目標
上記取り組みを行うことにより「9時間以上11時間未満」「11時間以上」のどちらかの勤務間インターバルを導入します。
新規導入の場合
過半数の従業員を対象とする、9時間以上の勤務インターバル制度を導入。
対象者拡大の場合
9時間以上の勤務インターバル制度を導入済でもその対象が半数以下であれば、過半数を対象とする制度に変更。
インターバル時間延長の場合
導入済の勤務インターバル制度が9時間未満の場合、2時間以上延長して勤務インターバルを9時間以上に延長。
申込と申請期間
2019年度の申し込みは締め切られています。
2019年度は2019年11月15日が申し込みの締め切りですが、当初予算が満たされた場合はこの日以前に締め切られる可能性もあります。
交付決定通知がなされ事業計画に基づき取り組みを実行。
労働局への支給申請は取り組み終了から1ヵ月以内、または2020年2月3日のいずれか早い方が締め切りです。
社労士・岩壁
さすがに予算を超えて受給することはできません。助成金は期限との勝負でもあります。
支給額
取り組み経費に対して3/4の金額が助成金として支給されますが、常用労働者30人以下かつ支給対象の取組で6から10を実施する場合に30万円を超える場合は補助率が4/5になります。
助成金額の上限
インターバル時間 | ①新規導入 | ②対象拡大 ③インターバル時間延長 |
---|---|---|
9時間以上11時間未満 | 80万円 | 40万円 |
11時間以上 | 100万円 | 50万円 |
助成対象経費
助成金の対象となる取り組み経費は例えば次のようなもので、いずれも導入によって生産性が向上していなければなりません。
- 紙で記録していた出退勤をICカード打刻にした
- 機械設備を入れ替えて効率性をUPさせた
- 外部の専門コンサルタント研修で抜本的な問題解決をした
まとめ
- 新規導入、対象者拡充、時間延長の場合に勤務間インターバル助成金が受給できる
- 勤務間インターバル制度を導入するための費用に対して一定割合が助成される