社労士・岩壁
人材確保等支援助成金とは職場環境改善の取り組みによって従業員の確保・定着に貢献した企業に対して支給される助成金です。その中でも雇用管理制度助成コースは退職者を減らすための人事制度を定め、制度が適切に導入・運用されて離職率低下が図られたら目標達成としての助成金を受給できます。
コンテンツ
全体概要
人材確保等支援助成金は従業員の安定的な確保や定着に対する助成金で、次のコースから成ります。
- 雇用管理制度助成コース
- 介護福祉機器助成コース
- 介護・保育労働者雇用管理制度助成コース
ここでは人事制度の導入によって従業員の定着を図る雇用管理制度助成コースについて記載します。
雇用管理制度助成コース
概要
雇用管理制度助成コースは労働環境向上のために、次のいずれかの人事制度を導入した企業に対して助成されます。
- 評価・処遇制度
- 研修制度
- 健康づくり制度
- メンター制度
- 短時間正社員制度(保育事業主のみ)
これらの人事制度導入・運用の結果、離職率の低下が図られたら人材確保等支援助成金を受給できることとなります。
対象者
細かい要件が多々ありますが、いわゆる正社員とほぼ同義です。
ただし保育事業のみ対象となる短時間正社員制度においては、保育関係業務に就く従業員が対象です。
助成金額
1事業所あたり57万円<72万円>
<>内は生産性が向上した場合
金額は複数の人事制度を導入していた場合でも変わりません。
導入時の助成はなく、目標達成時に受給できます。
対象となる雇用管理制度
雇用管理制度は5つの中から1つ以上を導入しなければなりません。
評価・処遇制度
対象となる制度は次のとおりです。
- 評価・処遇制度(評価対象者・評価者・評価基準・実施方法・反映方法等を定めた制度)
- 昇進・昇格基準
- 賃金制度(退職金制度・賞与を含む)
- 各手当制度(通勤手当・住居手当・転居手当(異動手当)・家族手当・単身赴任手当・役職手当(管理職手当)・資格手当・海外赴任手当・地域手当・出張手当・その他通常の労働者の評価処遇制度に係る諸手当制度として適当であると認められるもの)
制度導入にあたっては次のような要件を満たす必要があります。
- 正社員に対する制度である
- 制度導入後の賃金が下がっていないこと
- 制度適用の合理的条件を就業規則等に明示すること
- 諸手当導入に関して基本給を下げるものでないこと
- 手当廃止の場合は新設手当支給総額が廃止手当より増加していること
研修制度
新たな研修制度の導入に関して、次の全てを満たす研修制度でなければいけません。
- 職務遂行に必要な知識・スキル等の付与を目的にカリキュラム内容、時間等を定めた教育訓練・研修制度
- off-JTで行われる教育訓練等(時間管理ができるなら通信講座も可)
- 1人10時間以上(休憩・移動時間等を除く)の教育訓練等(教育訓練等時間のうち3分の2以上が労働関係法令等により実施が義務付けられているものは除く)
- 時間内における賃金・受講料(入学金等を含む)・交通費等の諸経費は全額会社が負担する
- 教育訓練等期間中の賃金は減額されずに支払われている(割増賃金含む)
- 制度実施の合理的条件と事業主費用負担が就業規則等に明示されている
- 計画期間内に退職が予定されている者のみを対象とするものでない
健康づくり制度
法定の健康診断制度はこの助成金対象にはならず、法定健康診断の他に新たに健康づくりのための導入が必要です。
- 法定健康診断に加え次のいずれか1つ以上を導入する(胃がん検診、子宮がん検診、肺がん検診、乳がん検診、大腸がん検診、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、腰痛健康診断)
- 費用を要する場合は半額以上を事業主が負担している
- 診断結果・所見等の必要な情報提供により、必要な配慮を行うことを目的としたものである
- 制度実施の合理的条件と事業主費用負担が就業規則等に明示されている
- 計画期間内に退職が予定されている者のみを対象とするものでない
メンター制度
- キャリア形成上の課題および職場の問題解決を支援するためのメンタリングの措置である
- メンターに対しメンタリングに関する知識・スキル等の習得を目的とする講習を受講させる(①研修制度の一環で行う場合は不可)
- 講習費用を要する場合は半額以上を事業主が負担している
- メンター、メンティによる面談方式のメンタリングを実施する
- メンター、メンティに対し、メンター制度に関する事前説明を行う
- 制度実施の合理的条件と事業主費用負担が就業規則等に明示されている
- 計画期間内に退職が予定されている者のみを対象とするものでない
短時間正社員制度
この制度は保育事業のみ適用され、保育に関わる人たちに対し様々な働き方を推進するための制度です。
- 既存従業員または新規雇用労働者を短時間正社員とする
- 制度実施の合理的条件と事業主費用負担が就業規則等に明示されている
- 計画期間内に退職が予定されている者のみを対象とするものでない
手続きの流れ
手順1
雇用管理制度整備計画の提出
まずは提出期限内に雇用管理制度整備計画を都道府県労働局に提出しなければなりません。提出期限は計画開始日(制度導入日)の6ヵ月前~1ヵ月前の日の前日までです。また計画期間は3ヵ月以上1年以内で定める必要があります。
手順2
雇用管理制度の導入
雇用管理制度は5つの中から1つ以上を導入しなければなりません。
手順3
取り組みの実施
計画期間内に制度の導入・実施を行い、評価時離職率算定期間(※)の末日まで引き続き雇用管理制度を実施してください。
(※)評価時離職率算定期間
計画期間末日の翌日から12ヵ月。
(例)
計画期間=2019年9月1日~2020年8月31日
評価時離職率算定期間=2020年9月1日~2021年8月31日
(例)
計画期間=2019年9月1日~2020年8月31日
評価時離職率算定期間=2020年9月1日~2021年8月31日
手順4
支給申請
評価時離職率算定期間終了後、2ヵ月以内に支給申請を行います。上記で例えると、支給申請期間は2021年9月1日~2021年10月31日となります。
まとめ
- 労働環境向上のために対象となる人事制度を導入
- 離職率低下の目標達成で助成対象となる