雇用・労働分野に関する助成金受給に必要なこと

社労士・岩壁

「助成金は簡単に取れます」そう言われたことはありませんか?たしかに補助金と違ってコンペではないため、条件を満たせば受給は可能です。しかし受給にあたって適切な労務管理ができている企業は思いのほか少ないものです。多くの企業にとって、助成金は簡単ではありません。

適切な労務管理が必須

労務管理とは

労務管理とは、法令遵守はもちろんのこと、従業員が健康的に働くための環境を日頃から適切に管理していく一連の行為を言います。

決して明文化された法令を守るだけでなく、従業員のパフォーマンスが上がるようなマネジメントも全て含めて労務管理です。

社会保険・労働保険の加入

雇用助成金ではまず雇用保険適用事業所であることが要件として求められます。

しかし雇用保険に限らず、法定で義務がある場合は社会保険(健康保険・厚生年金)への加入も必要です。(特に法人の場合は社会保険への加入は必須)

ルールに沿った運用

雇用契約書や就業規則に定めたとおりのルールで運用をする必要があります。

たとえ会社の厚意であったとしても、ルールと違う運用をすることは雇用助成金申請上は不支給の原因になるため注意が必要です。
(例えばアルバイトは時給としているのに、ルール外で特定のアルバイトのみ月給制にしているなど)

会社の対応としては、きちんと就業規則や雇用契約書に定めたとおりの対応を行いましょう。

4種の神器

社労士・岩壁

雇用助成金を申請するにあたって必ずと言って良いほど要求される資料4つを私は4種の神器と呼んでいます。(助成金によっては要求されないものもあります)前述の適切な労務管理につながる資料ですから、これらの資料を正しく記録して準備することが重要です。

就業規則

常時10人以上の従業員がいる事業場は、就業規則を作成して労働基準監督署へ届け出る義務があります。

10人未満の場合はその義務はありませんが、雇用助成金の申請にあたっては就業規則等に助成金受給に合致した制度を定めているかどうかが確認されるため、労働基準法上の作成義務はなくても雇用助成金申請上では就業規則が必要になってきます。

なお必ずしも就業規則という体裁を採っている必要はありません。

会社としてそのような定めをきちんとしていることが明確に分かることが重要で、もちろん作成だけでなく従業員への周知がされていることも条件となります。

ただし助成金申請のことを考えると、きちんと就業規則という形式で整えることを推奨します。

賃金台帳

毎月の給与支払い状況を個人別に一覧にしたものです。

きちんと手当ごとに区分されて記載されていることが必要であり、課税給与の合計だけを記載した源泉徴収簿で代用することはできません。

雇用契約書(労働条件通知書)

賃金台帳は毎月の支払状況を記録したものですが、その賃金額が本当に会社と従業員の合意に基づく金額かどうかを確認するための書類が雇用契約書です。

特に有期契約の場合は、その雇用期間を確認する目的でも使用されます。

  • 雇用契約期間
  • 給与や手当の額
  • 所定労働時間や休日

主にこれらがチェックされ、適切な運用がなされているかどうかの判断ポイントになります。

出勤簿

出勤簿やタイムカードなどで毎日の勤務を記録し、残業代の計算だけではなく、時間外労働が適切な範囲であるかの確認等にも使用します。

ここで重要なことは、出勤・退勤・休憩などの時刻をきちんと記載することです。

「2月4日〇〇株式会社にて××作業」のような、いわゆる作業日報は勤務管理の役割を果たしません。

いつ出退勤したのかが客観的ではないため、給与計算が適切に行われているかどうか等の確認が取れないためです。

仮に助成金申請時このような作業日報を勤務表代わりに提出しても、認められることはほぼないと思ってください。

法定三帳簿

よく求められる書類を4種の神器として記載しましたが、労働分野においては「法定三帳簿」が存在します。

  1. 労働者名簿
  2. 賃金台帳
  3. 出勤簿

賃金台帳・出勤簿は雇用助成金4種の神器と同じですが、法定三帳簿には労働者名簿が加わります。

雇用助成金申請上は求められることは少ないですが、こちらも法定帳簿として備え付けておきましょう。

参考 労働者を雇用したら帳簿などを整えましょう厚生労働省

その他

表面上で求められている書類を全て添付すれば良いというわけではなく、雇用助成金を申請後、労働局チェックで追加書類を求められることがあります。

ベストは労働局からの問い合わせが入らないくらいきちんとした書類を作成・添付することであるのは言うまでもありません。

雇用助成金をやるかどうかの判断ポイント

雇用助成金の目的

雇用助成金は次のような施策を行った事業主に対して支給されます。

  • 雇用の創出や維持
  • 労働条件の向上
  • 労働環境の整備
  • 従業員のスキルアップ

あくまでも労働者のための施策に対して支給されるのが雇用助成金です。

「お金が欲しいからこの施策をしよう」とお金が先にきて助成金を検討するのは本末転倒であり、正しい思考順序としては「こういった施策をしたいんだけど助成金の対象になるかな」が本来あるべき考え方です。

もちろん雇用助成金を申請すること自体が悪いわけでは全くありませんし、私もそのサポートを業として行っています。

目的はあくまでも労働条件の向上です。
適切な施策をして、正しく雇用助成金を受給しましょう。

判断ポイント

もし雇用助成金の対象となる施策をしようかどうか迷った場合は、次の1点のみを考えてみてください。

雇用助成金がもらえなくてもその施策をやるか、です。

これで答えがYesであれば積極的に行ってください。
Noであればお金が目的になっているのできちんと考え直しましょう。

必ずもらえる保障もありません。

雇用助成金は受給までかなり時間を要します。

決して企業の資金繰りや利益を向上させる目的ではない、という趣旨は肝に命じる必要があります。

まとめ

  • 雇用助成金は雇用創出や労働条件向上等へのボーナス的なもの
  • 適切な労務管理をしている企業に対して支給される
  • 迷ったら「雇用助成金がもらえなくてもやるか?」を判断基準とすべき

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