入社時の身元保証書で注意すべきポイントは?

社労士・岩壁

入社時に提出してもらう書類は法律や手続き上で必要な書類と、会社が独自に提出してもらう書類があります。前者では社会保険や税金に関係する書類が該当しますが(年金手帳など)、後者では誓約書などがあります。この記事では一般的に提出させることが多い「身元保証書」について解説します。入社時に提出してもらうことが多い書類ですが、同時に形骸化が顕著な書類でもありますので今一度、その内容を確認していきましょう 。

身元保証書とは?

身元保証書は主に入社時書類として提出を求めることが多い書類で、主に次の2点について保証人に誓約させる書類です。

  • 入社者が誠実勤務すること
  • 入社者が会社に損害を与えた場合は連帯して賠償すること

身元保証人は通常1~2名で、「3親等以内の親族」「独立して生計を営む成年」など、身元保証人の要件を定めることも一般的です。

法律の規制

身元保証に関する法律

身元保証に関しては、「身元保証に関する法律」が存在します。

従業員が会社に損害を与えた場合に身元保証人に賠償させる身元保証契約について、こちらの法律で規制を設けています。

ボリュームのある法律ではありませんが、主な要件について見ていきましょう。

期間を定めない場合は3年

身元保証契約の期間を定めない場合は自動的に成立の日から3年間(商工業見習いは5年)が有効期間として取り扱われます。(身元保証に関する法律第1条)

身元保証書に期間を定めていない企業も多くありますので、注意しましょう。

期間を定める場合は最大5年

身元保証書の期間を定める場合は最大で5年です。(身元保証に関する法律第2条)

5年を超える期間を定めても5年とされ、更新の時も同様です。

なお自動更新は基本的にできず、身元保証契約は期間満了の都度、更新作業をする必要があります。

一般的に身元保証書は入社時に提出してもらい、それっきり更新作業を行わず形骸化している企業も多く見られます。

特に金融商品を扱うなど損害額が多額になりそうな企業であれば、身元保証書をどのような位置付けで扱うのか一度見直した方が良いでしょう。

身元保証人への通知

次のような場合、会社は身元保証人へ通知する必要があります。(身元保証に関する法律第3条)

  • 従業員の不適任・不誠実な事由があり身元保証人への責任が生じるおそれがあるとき
  • 従業員の任務・任地が変更になり身元保証人の責任が重くなる、または監督が困難になるとき

また、身元保証人がこの通知を受けた時は将来に向かって保証契約を解除をすることが可能です。(身元保証に関する法律第4条)

全ての責任を負わせられるわけではない

身元保証契約をしているからといって、従業員の引き起こした損害を身元保証人に全ての責任を負わせることは現実的ではありません。

従業員本人に賠償請求できる額も一般的には損害の4分の1程度です。(故意や悪質な場合を除く)

実際に争いになった場合は従業員本人の場合同様に、様々な要件が考慮され身元保証人の責任軽減が図られるため、実際には多くの賠償責任を負わせることは難しいと言えます。

会社が従業員を使用することにより事業を営んでいるという性質上からも会社側の責任も免れないため、「従業員のミス=全て従業員の責任」とはならないのです。

仮に責任と賠償が認められたとしても、従業員や保証人の支払い能力・資産にもよりますので、回収可能かどうかは別問題になります。

よって身元保証書があるかどうかに関わらず、企業側は事業リスクに対する適切な保険等に加入しておくべきでしょう。

改正民法により極度額(上限額)の設定が必要

2020年4月1日施行の改正民法により保証に関する定めが変わり、極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約(一定範囲の不特定債務を保証し、発生する債務金額が不明確な契約)は基本的に無効となります。

「身元保証に関する法律」の改正ではありませんが、一般法である民法の改正が身元保証契約にも影響を与えることとなります。

なお極度額(上限額)をいくらにしたら良いか?は悩ましいところです。

非現実的な金額にすると身元保証をする人が見つからないし、公序良俗に反すると判断される可能性もあります。

身元保証に関する法律でも裁判所は諸般の事情を考慮することになっています。(身元保証に関する法律第5条)

会社の事業内容や従業員の地位等を考慮して、企業ごとに目安を定めていくしかないでしょう。

身元保証書サンプル

身元保証書

株式会社●●
代表取締役 ●● 様

(入社者)
住所 ●●●●●●●●●●
氏名 ●●●●●●●●●●

私はこの度、上記入社者が貴社へ入社するにあたり、以下を誓約いたします。

1 入社者が貴社就業規則等を遵守し、誠実に勤務できる者であることを保証します。
2 入社者が貴社就業規則等に違反し、故意または過失により貴社へ損害を与えた場合は、入社者と連帯してその損害を賠償します。
3 本保証期間は20●●年●月●日から20●●年●月●日までとします。
4 本保証に伴う賠償限度額は金●●円とします。
5 その他、本身元保証書に記載のない事項は民法・身元保証に関する法律、その他関連法規に則ります。

20●●年●月●日

(身元保証人)
住所 ●●●●●●●●●●
氏名 ●●●●●●●●●(印)
入社者との関係 ●●●●●●●●●●

社労士・岩壁

保証人の印鑑も実印にして印鑑証明添付が一番安全ですが、仰々しくすると身元保証人が見つからず提出できない恐れもあります。会社リスク管理と実務のバランスが非常に難しいところです。

まとめ

  • 身元保証は自動更新はできない
  • 2020年4月1日以降は上限額の記載が必要になる
  • 身元保証書があっても責任の全部を負わせることは現実的には難しい

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