社労士・岩壁
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雇用契約書と労働条件通知書の違い
雇用契約書とは
雇用契約書は会社と従業員がそれぞれ次のことを契約した証拠として取り交わします。
- 会社=労働の対価として賃金を支払うこと
- 従業員=労働を提供すること
もちろん細かい部分では他の権利義務関係も発生しますが、一番大きな部分では上記の約束をしたことを書面に残すのが雇用契約書です。
しかし一定の例外を除いて契約自体は口頭でも成り立ち、雇用契約自体も決して書面で取り交わすことが義務付けられているわけではありません。
労働条件通知書とは
口頭でも成り立つ雇用契約に対し、労働条件通知書は法律上の発行義務があります。 (一定条件を満たせばWEB上での通知も可)
これは正社員に限らず、契約社員やアルバイトであっても同様です。
労働条件通知書には必ず書面で通知しなければならない内容が定められています。 (労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条)
- 労働契約期間
- 就業場所、業務内容
- 就業時間、所定外労働の有無、休憩、休日、休暇、等
- 賃金に関すること
- 退職に関すること
上記以外の内容 (退職金、賞与等)については口頭明示でも良いとされています。
ただし雇用契約書とは違って、労働条件通知書は会社が一方的に通知するだけの書類です。
雇用契約書を取り交わすケース
契約期間を定める場合
筆者の経験上、雇用契約書を取り交わすのは有期契約社員・有期アルバイトを採用する時が圧倒的に多く、正社員で雇用契約書を取り交わすケースは少数派です。
それは契約期間を定めることの証憑として書面に残すという意味が一番大きく、正社員は基本的に定年以外で自動的に退職になることはありません。
一方で有期契約の場合は会社の経営状況などから契約更新をしないケースもあります。
その時に契約期間に合意した証憑がないとトラブルになりやすいから雇用契約書をきちんと取り交わすケースが一般的です。
また、人事制度の中で昇給が決まっていく正社員とは違い、契約社員は契約更改に伴って賃金変更をすることが一般的であるため、新賃金額に合意をした証とする意味合いも強くあります。
一般的に一番トラブルになりやすいのは賃金額です。
契約に紐づいて賃金額が決まる契約社員は雇用契約書でその旨を定めます。
正社員の一般的な取り扱い
前記のように正社員は通常、契約更新という作業がないため、毎年の人事評価等により給与額が決まります。
そして契約社員では新雇用契約書を締結するかわりに、正社員の場合は昇給通知など新給与額を会社から一方的に提示されることが大半です。
給与額が変わるたびに雇用契約書を締結することはあまり一般的ではありませんし、実際の処理実務としても手間がかかることは間違いありません。
正社員に雇用契約書は必要か
結論から言うと、入社時(あるいは正社員登用時)だけでも取り交わした方が良いと思います。
毎年の昇給のたびに雇用契約書を締結し直すのは無理だとしても、入社時においては入社時給与額やその後の待遇が就業規則や人事評価によって決まっていくことについて会社と社員が合意した証として雇用契約書はあった方が良いと言えます。
実際に雇用助成金の申請等では雇用契約書を求められるケースがあります。
その条件について社員側も同意していることが分かるような書類が望ましいからです。(助成金の添付書類として雇用契約書でなければ絶対に認められないという意味ではありません)
一方的に労働条件通知をするだけでなく、労働条件通知書兼雇用契約書という取り扱いにして、お互いに証憑として保管することが最善の対応ではないでしょうか。
まとめ
- 雇用契約書は法的な締結義務はない
- 契約社員やアルバイトの場合は期間の定めがあるため取り交わすことが一般的
- 正社員であっても入社時は労働条件通知書と雇用契約書を兼用することが望ましい