退職は何日前に申し出てもらうべきか?

社労士・岩壁

退職の意思表示は何日前に申し出てもらえば良いか、民法や労働基準法の決まりをご存知でしょうか?円満退社が第一ですから、法律の決まりを把握しつつ、適切なタイミングで申し出てもらうことが大事です。民法や就業規則の定めについて今一度考えていきましょう。

民法の決まり

法的にOKな退職意思表示のタイミング

民法は全ての民事法の大原則ですから、まずは民法の原則ルールを知ることが大切になります。

その民法では次のように規定されています。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

民法第627条
1項
2項・3項に該当しない場合は2週間前に申し出れば良いことになっていますが、この条文は雇用期間の定めがない場合の話です。
契約社員などの有期雇用契約の場合は、通常は雇用契約書や就業規則に退職について定めることになります。
2項
2項で定めているのは完全月給制の場合です(ここでいう「期」は給与締日だと思ってください)。
末日締め場合で1~15日に退職申し入れをしたら当月末日、16~末日に退職申し入れをしたら翌月末日に退職をすることができます。タイミングによって、退職申し入れから退職日までの期間が異なります。

社労士・岩壁

補足ですが月給制も「完全月給制」と「日給月給制」に分かれます。完全月給制は欠勤・遅刻早退などの控除はありませんが、日給月給制は欠勤・遅刻早退での日割りや時間割り控除があります。一般的に完全月給制は役職者に適用されることが多いです。
3項
3項は年俸制のようなケースです。
この場合は3ヵ月前までに退職申し入れをする必要があります。

改正後の民法(2020年4月1日)

2020年4月1日に民法第627条2項・3項が改正されます。

現行で2項・3項は両当事者の申し入れに対しての規定ですが、改正後は使用者(会社)からの解約申し入れのみに適用され、労働者側からの申し入れは全て2週間前で良いことになります。

労働基準法

労働基準法は民法の特別法

民法の中でも労働関係に特化した法律が労働基準法なので、民法と労働基準法の内容が違っている場合は労働基準法が優先します。

労働基準法では会社側からの解約申し入れ(解雇)について、下記のように規定しています。

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

労働基準法第20条

すなわち民法第627条の規定に関わらず、会社側は30日前に解雇予告するか、30日分の平均賃金を支払えば解雇はできるということになります。

一方、労働者側からの退職申し入れについては労働基準法では規定されていないため、原則通り民法(2週間前の申し入れ)が適用されます。

なお解雇に客観的に合理的な理由と社会通念上相当性が必要であり、30日前に予告するか30日分の平均賃金を支払えば自由に解雇できるというわけではありません。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法第16条

民法と就業規則はどちらが優先されるか

多くの企業では就業規則等で「退職は30日前までに申し出ること」等と、2週間より長い申し出期間が定められています。

民法では原則2週間前で良いことになっている一方で、2週間よりも長い申し入れ期間を定める就業規則との関係をどう考えれば良いでしょうか。

判例においては民法が優先するという考え方を採用しています。(高野メリヤス事件・東京地裁昭和51年10月29日判決)

判例に従えば「民法>就業規則」となり、就業規則の定めに関わらず従業員側は2週間前に退職を申し入れれば退職できることになります。

就業規則の決まりをどう考えれば良いか

2週間前に退職を申し入れれば従業員側の一方的な意思表示で退職が可能ですが、その一方、就業規則では民法よりも長い申し入れ期間が定められていることが一般的です。

これは就業規則が民法に反しているというよりは、労働者側からの『合意退職』の申し入れに関する規定と解釈できます。

通常であれば会社と話し合いの上で正式に退職が決定しますので、従業員側が一方的に意思表示して退職するというケースはあまりないと言えます。

職種や会社規模にもよりますが、現実的に2週間で引き継ぎや後任探しはかなり困難です。

ですから就業規則の定めが民法と反していても、それは会社側からの「合意退職するにあたってのお願い」という意味合いが強くなります。

そのような意味では就業規則で「30日前までに」等と定めること自体に意味がないわけではありません。

もし合意退職が難しいような場合には、民法の原則通り2週間(または従業員が申し入れた退職日)によって退職が可能となり、従業員側からの一方的な意思表示ならば会社承認の有無は関係ありません。

ただし就業規則上の申し入れ期間があまりに長すぎる場合は公序良俗違反になるため。就業規則の定めの効力自体が問題になることは考えられます。

退職届と退職願の違い

細かい違いを意識している人は少ないかもしれませんが、退職届と退職願には違いがあります。

退職届
労働者側の強い意思表示による届出です。合意退職の申し入れというよりは、「この日で退職します」という意思決定の通知という意味が強くなります。
退職願
退職願は文字通りあくまで“お願い”ですから、合意退職の申し入れという意味が強くなります。正式な退職日は会社と労働者側による話し合いで決定します。

退職届と退職願の違いを意識して見ている会社は少ないと思いますが、特に意図がないのであれば“退職願”としておく方が無難です。

まとめ

  • 民法の原則に従うなら2週間前の申し入れで退職可能
  • 就業規則の定めは「合意退職のお願い」という意味合いが強くなる
     ⇒民法より長い期間の申し入れ自体に合理性はある
  • 双方目指すべきは円満退職